2018年12月10日月曜日

寒波への手紙

前略、寒波くん。担当の乃森だ。
まずはこちらから。

==本日のりんご======
・無袋ふじ
・王林
・シナノゴールド
・ぐんま名月
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あまりに君が突然にやってくるものだから、
僕は少し驚いてしまったよ。
それに「ゆき」さんなんていう連れ合いまで
つれてくるなんて、さらに驚きじゃあないか。

僕はといえばあいも変わらず林檎売りをしているよ。






今ちょうど林檎の具合もいいようだ。
君もひとつかじってみてはどうかね。
ここらでは大層な人気だよ。




林檎だけじゃあ、こちらもうまくない。
ナメコや大根なんかも置いてある。


どうだきれいなナメコだろう。
君は頑なに「汚いくらいのほうがナメコはうまいんだ」などと
講釈をたれていたけれど、確かに君の作るナメコ汁はうまかったな。

そういえば、あの三宿の狭いぼろアパートを憶えているかい?
近所の八百屋で売れ残りの大根を安く譲ってもらって、
醤油だけで炊いたなんとも味気ない大根を、からしをたっぷりつけて、
安酒をちびりちびりとやっていたな。

あの頃の君からは想像もつかないが、
いったい「ゆき」さんなんて美人をどこでつかまえたんだい?



君のことだから、また明日にでも挨拶も無く行ってしまうんだろう。

だけど僕はなんだか来月、いや、さ来月あたりにでも、
君がふらりと現れるような気がするんだ。
その頃でも僕は相変わらず林檎でも売っていると思うがね。

ではまた君に会えるのを楽しみにしているよ。
と、長年の友人の手前、こうは言っているけれど、
君が現れるとどうもおかしなことばかり起きるんだ。
僕にとってはありがた迷惑さ。
思い起こせば君がいつも現れるのは、
ずいぶんと冬が深くなってからだったような気がするね。
だからしばらく来ないでくれたまえ。

ではいずれまた会おう。