2019年2月8日金曜日

寒波への手紙 三通目

前略、寒波君。担当の乃森だ。
まずはこちらから。

==本日のりんご=======
・無袋ふじ
・シナノゴールド
・スリムレッド
・はるか
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君への手紙も久しぶりのようだ。
君が北海道のほうでずいぶんとひどい癇癪を起こして
大変だと聞いたものだから、つい筆をとってしまったよ。
だが今回の君は、かなりご立腹のようだね。
こちらもそのあおりを受けておる。
今日なんぞ、零度より気温が上がらんそうだ。
少し落ち着きたまえ。君の悪い癖だよ。

僕は相変わらず林檎売りをしておるが、
最近はすっかり品物も薄くなってね。
今日も数えるほどしか出ておらん。




野菜にいたっては、この深い冬のせいだ。
ほとんど店には出てこなくなった。




雪国での商売というのもなかなかに難しいものだ。

そこでだ。
我々としても黙って雪掃きばかりはしておられん。
こんなものをこしらえてみたわけだ。



ここに野菜が眠っておる。
雪があるのなら、雪で冷やしてしまえという単純な発想だが、
実に聡明ではないか。
現代技術にも舌を巻くものが多いが、先人の知恵も侮れん。
体力は使うが、雪に金は払わんで済む。
それに寒さに当たった野菜は、それは甘くなるそうだ。
どうだね。
若い時分に君と頂いた、酒蔵の秘蔵酒みたいであろう。

まあ、雪があっての話ではある。
それについては君にも素直に感謝しておこう。
一応、春の初めまで野菜たちは眠る予定だ。
時折君が訪れて連れ合いの「ゆき」さんに、
少し雪でもかぶせてもらえると実にありがたい。

今度顔を出したときに、
この秘蔵野菜を君も味わってみるといい。
なんともいえない甘さと瑞々しさだ。

ではいずれまた会おう。