2020年2月6日木曜日

寒波への手紙 令和二年

前略、寒波くん。担当の乃森だ。
まずはこちらから。

==本日のりんご========
・無袋ふじ
・シナノゴールド
・はるか
・王林
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昨年はひょっこりと何回か顔を見せていたのに、
今年ときたら全くの音沙汰なしだ。
さすがの僕も少し気にはなっておったが、
君の事だ、また良からぬ事に夢中になってすっかり遊び呆けていたのであろう。
ところがだ。もう春のにおいすらしてきそうなこの陽気に、
全く君は悪い奴だね、夜のうちに来て随分と派手にやっていったようだな。


今はすっかり晴れておる。僕に顔を見せずに去って行くとは、
まあなんとも全く君らしいではないか。

僕と言えば相も変わらずりんご売りをしているよ。
見たまえ。店にはまだりんごが並んでおる。






少しばかりではあるが、西洋梨も並んでおるのだ。
そう言えば君は試した事があったか?
りんごもいいが西洋梨も試してみたらどうかね。


君が顔を見せなかったので、近所の畑はちょっとばかり勝手が違ったらしい。
本来であれば雪の下で眠っておるものも、雪がないせいだ、
雪の中で籠れないという。収穫の作業には苦慮はせぬが、
なにぶん雪を被っていないのだ。植えっぱなしというのもよくない。
今年はそんな野菜たちが店に並んでおった。



しかし君はまた本当に突然やってきて相変わらずの困り者だね。
先のりんごといい、野菜といい、少し店を見てみたまえ。




昨日の状況と少しも変わらぬ。
何ゆえか、君も少し考えればわかるであろうが、
誰も品物を持って来ぬのだ。それはそうであろう。
家の雪片付けもしなくちゃならんし、お客だって来やしない。
君が来るといつもこうなるのだ。
商売をするほうとしては君は全くの疫病神というわけさ。

だがね、そうはいっても友人としてはたまには顔を見たいものだ。
今年はもう来ないであろうと思っていたのだが、
元来の君の性分を考えるとふらっと現れるはずだと
僕も心の内で少し期待していたようだ。

さて仕方がない。
顔も見せずに行ってしまった不義理な友人ではあるが、
君の忘れものでも少し片づけるとしようではないか。
なにせ、お客が来ないものだからね。


いずれまた会おう。