2022年1月14日金曜日

寒波への手紙 令和四年

前略、寒波くん。担当の乃森だ。
まずはこちらから。

==本日のりんご==========
・無袋ふじ
・シナノゴールド
・ぐんま名月
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近頃の君は随分とよく顔を出すようになったではないか。
昨日今日だけではなく、今年は珍しく正月にまで顔を出して、
まあ、あわよくばお年玉でもくすねようという魂胆であったのだろうが、
しかし、君のお陰で僕はとんだ災難を被った訳だよ。
一昨年あたりからからコロナという流行り病があるのを知っておるだろう。
そのコロナがどういう訳かこの正月にはすっかり影を潜めておってな、
これ幸いと皆が皆帰省やら遠出やらを始めた訳さ。
かく言う僕もそんな時世に紛れ込んで、
少しばかり縁のある所へ久しぶりに顔を出そうと考えておったのだ。
だが、そこへ君だ。
どうしていつもそうなのだ。
私の邪魔ばかりをするのだ。

君が現われたせいで道はあえなく通交止めと相成った。
君が随分と大暴れしたものだから、道の雪掃きをしていた者たちも、
尻尾を巻いて逃げおったようだ。
それで私の思惑もすっかり飛んでしまった。
君、それで私の正月はどうなったと思うかね。
簡単に想像がつこう。

さて、相変わらず僕はりんご売りなどをやっておる訳だが、
この度のりんごは随分と苦労をしてね。
君の知り合いに霜と言う奴がおるだろう。
先の春に彼がとんでもない悪さをしてね。
花をほとんど枯らせてしまったのだ。
そのせいで実はならんし、成った実は見てくれも悪い。
りんごが貴重品になるなど誰が想像したものか。
お店は怒号渦巻く押し合いへし合いの大騒動だ。
冬が進んで今ではそれもなりを潜めたが、やはりりんごの数は少ない。





並んだりんごの数で言えば最盛期とそう数は変わらん。
そう考えるとどれだけ異常だったのかわかるであろう。

さて、ここ数日君が現われたせいで、
閑古鳥というやつが随分と鳴いておる。
野菜もあまり入ってはこん。


ご覧。大根は四本しかない。


あとはこれだけだ。



君が現われると、品物を持って来ようという気も失せるらしい。

それではさぞかし暇だろうと思うことなかれ。
僕は逆に大忙しだ。したくもない苦労を君に頂いておるのだ。

今朝も誰もいない頃から片付けを始め、ようやくここまで綺麗にしたのだ。


だがな、問題はこれで仕舞いではないということだ。
君が居座っておるものだから、とてもじゃないがすぐには終わらん。
この君への苦情の手紙を書き終えたなら、
また表へ出てやらんといかん。
機械の油代だって馬鹿にならんのだよ。

さて、今日を限りに君は帰るそうだな。
君とは幼少の時分からの付き合いであるが、
君が来るとろくでもないことばかり起こるのでね。
明日また片付けをしないで済むと思うと、僕は心底安心しておる。
明日は少しゆっくり目覚めることにしよう。

まあ、毎年毎年このように君を邪険に扱うもの、
僕と君の仲があってのものだ。
くどくどと言ってはみたが、まあ土産でも持って帰えり給え。


珍しい駝鳥の肉を使ったものだ。
その中でも唐辛子とチーズを使った特別なものであるぞ。
これで連れ合いの「雪」さんのご機嫌でも取り給え。
少しばかり大人しくしてくれまいかと。

さて、僕は行かねばならん。
車停めの場所を空けないといかんのでね。

いいかね、あまり寒さに馴染みのない場所になど行くものではないぞ。
君が行くとそこに住む者に迷惑がかかるのでな。

来月辺りにまたひょっこり顔を出しそうな気もするが、
できればそうならないことを願うばかりだ。

いずれまた会おう。